FEATURE 24

Getting the job done.

ビジュアル制作の現場 西山(以下N)今回はCOVID-19関連の情報が錯綜する中で作り上げたビジュアルですね。 長谷川(以下H)当初はロケで撮影しようとか動画も撮ろうとか色々アイデアを出してましたが、コロナの影響で全部流れて、本当に撮影しても大丈夫なのかって状況になり、テツさんと改めていろいろ話し合って、切り抜きとコラージュのアイデアに行き着いたんですよね。コラージュならロケーションを入れることもできるし、本当に山へロケに行くよりも、あくまでフェイクなイメージとしての山が欲しかったので。 N コラージュといった手法が加わると、世界観をコントロールできるところがありますよね。
アキオくんはコラージュ自体、昔からよくやってるんですよね?
H そうですね。20年くらい前から切り抜きとコラージュはやっていたんですが、今の手法はポパイの頃、ADの前田くんが思いついたものと、自分で見つけた手法のミックスです。何がなんだかみんなにはよく分かんないだろうけど(笑)
ファッション撮影って真夏に冬物を着せて撮ったりするのが過酷だったりするから、そういうときにコラージュっていいんですよね。自粛期間中の仕事の際にも役立ちました。
モデル撮影もブツ撮りもできない状況だったから、自分で着て自撮りしたり、その写真をレタッチしたり……。さすがに撮影とレタッチまで一人でやるのは本当に大変でしたね。細かいミスもありましたが、それも含めて味わいとして活かして。最初から最後まで自分でやるっていうのは楽しくもありましたね。
N アキオくんには着地点が見えてると思うんだけど……。と言うのも、一つのコーディネイトを着たモデルを撮影しながら、それを素材として、こんな風にコラージュしようといった具合に、全体の構成を見据えながら進めているのかなと。
僕としては、こういったスタイルの進行においては、ストーリーをディレクションする役割に徹するようにしています。現場で大量の素材を撮影し、このカットとこのカットを選ぶみたいな遣り方は、スタイリストという垣根を超えたアートディレクションですよね。凄いなって思います。
H 実際は手探りなんですけどね……。

N アキオくんのコラージュが好きで、特にダウンをレイヤーしているコーディネイトがあるんですが、スタイルがありますよね。誰の作品かが直ぐ分かる。スタイリストやデザイナーといった具合に分業してたら、こうは出来なかったんじゃないかなぁ。やはり、アキオくんの仕事は今後のあり方を変えていくんだと思います。 H 僕の場合、服の見せたいポイントがあって、あくまでそこ視点で作ってます。これまでアートディレクターやフォトグラファーと話しても、なかなか理解してもらえないことが多くて。
僕はファッションビジュアルを作るのが仕事なので、最終的にはその服が売れなければ意味がない。ファッションディレクターがビジュアルを作るっていう考え自体がアートディレクターには無いし、自分の仕事のテリトリーを侵されてる気分なのかもしれません。フォトグラファーも一緒で、彼らはアーティストの視点でカッコよく見える人物や写真を選ぶのですが、僕は服の形やシルエットにもこだわっているので、なかなか通じ合えません。
その部分を理解してもらえないと、一緒に仕事するのは難しいかもしれないんです。
N 業界は徐々に職域が変わってきてるんじゃないかなぁ。プロダクトを魅せていく立場としての関わり方が変わってきたんじゃないかと。 H 仕事って本当に自分が心の底から楽しめないと辛いじゃないですか。
DESCENDANTでは、自分が主体となって色々相談したり提案しながら自由にやらせてもらえるので、本当に楽しいんですよね。雑誌を作ってる感覚に近いと言うか。

N 本来コラボレーションって、そんな感じなんですよね。共同作業するには意志が交わるわけじゃないですか。互いの世界観を中立的に、互いがディレクションしていく難しさってあると思うんですよね。
ただ、それって、さっきの話でも出たけど、魅せてゆくことを互いのゴールとして共有していれば問題なかったりするのかなって。今では、自分たちでゼロから全てを育て上げたブランドが誰かに表現されて形を変えていくことが、自分たちにとってもブランドにとっても重要だと思ってます。
H カタログのアイテムページにキャプションが入ってるのも面白いし、DESCENDANTのカタログって本当に雑誌みたいですよね、テツさんが編集長で(笑)とにかく仕事を頂いてる以上、相手に頼んで良かったと思ってもらえるのが一番嬉しいし、そこにプラスして僕の場合、ブランドの売上にも貢献できたら言うことありません。
今回のビジュアルについても、コラージュをただ複写するだけだと写真が沈んでしまうので、複写した上に実データを載せ直して入稿したり、結構目に見えないところでこだわってます。ただのアート作品だと思われてしまうのが一番嫌で。あくまでファッションなので、ウェブやカタログを見て「この服欲しい」と思ってもらえないと意味がない。コラージュの背景も色変更したことでDESCENDANTのイメージに近付けたんじゃないか……と。
あとモデルについては、ヨッピーさん親子は特別として、何となくプロフェッショナルのモデルは魅力に欠ける気がして。反対に、スケーターがじつはモデルに向いてるんじゃないかと思うんです。あの動きから生まれる筋肉の付き方とか、ライフスタイルに染み付いた癖みたいなものが身体に現れている感じが好きで、そういう人に服を着せると雰囲気が出るのかなって。
N たしかにアキオくんの撮影は動きのある写真が多いもんね。 H そうですね、僕は、動いている人を撮るのが好きですね。

N 撮影中に観ていたマイケル・ジョーダンの『ラストダンス』に影響を受けたりするもの? そうですね、昔の雑誌『スポーツイラストレーテッド』や『ナンバー』の写真も凄く見ていたから、様々な影響を受けてるでしょうね。例えば、ジョーダンの写真を見ても、ショーツのめくれた感じとか膝のサポーターに目を奪われてしまいます。
じつは元ワイデン&ケネディのジョン・ジェイが90年代に作った写真集があって、白い背景でバスケットボールをしている選手たちを撮影したものなんですが、その着眼点が筋肉の盛り上がりやサポーターの形状など僕自身ともの凄く似ていたので驚きました。あとはスポーツをしている人の活き活きとした表情は好きです。だからモデルにはなるべく動いてもらうようにしてるのかもしれませんね。
N アキオくんがモデルを動かす由来について聞けちゃいましたね。 H 基本的にモデルに対してあまり指示しないようにはしてるんです。
以前、設定を伝えてやってみたんですけど、変な小芝居が始まっちゃって。そうじゃないんだよって思っても、それを上手く伝えられなくて、延々と駄目な芝居を観せられるハメに(笑)
N そういう感覚を共有していることがコラボレーションする上で大切なんだと思う。でも今回のビジュアルについてはアキオくんからグラフィックとテキストのリクエストがあって、困ったけど(笑) H 原宿でブランドを始めた世代に共通しているのかもしれませんが、早い時期にマックを導入して自らグラフィックを制作していたからか、グラフィックの表現が上手いんですよね。
特にテツさんはアパレルのデザイナーでありながら、こんなにグラフィックのスキルやバランス感覚に長けてる人は居ないじゃないかなぁ。折角の機会なので、どうしてもテツさんのグラフィックを使いたかったんです。言葉で伝えることの大切さも重要で、僕自身が原稿も書くので尚更そういう風に思うようになりました。普段、僕らはビジュアルを作ることに慣れてるから、ビジュアルに対する感度は高いと思うんですが、そうでなく文字で伝える方が理解し易い人も沢山居るわけで、だから言葉にはこだわってしまうんです。テツさんの言葉にはもの凄く強い吸引力を感じるので。
N プロダクトごとに添えられたテキストも、ブランドの歴史や作り手について理解してないと書けないだろうし、ブツ撮りの写真も含めて、本当に色々なマテリアルが集まって出来上がっています。このカタログというか冊子は、服が好きな人が集まって制作している感じですね。 H このカタログに限らず、全般的なモデル選びでこだわっていることと言えば、僕はカッコいい男の子を使うようにしています。もちろん個性的だったり雰囲気があることも大事ですが、まず前提としてハンサムであること。その方が見ていて気持ちが良いし。 N 服を作る際にも、誰が着るのか考えながら作るんですけど、DESCENDANTではまず自分の着たい服を作るっていうコンセプトがある。ただ独りよがりな服を作るのも本望じゃないし、万人受けするような服作りがしたいわけでもない。DESCENDANTらしさを追求していくと、着ることのハードルが上がってしまうし、買ってくれた人が着られないようでは本末転倒だし。新しい提案をするとき、古いものを復活させるとき、個性的なアイテムを発表するとき、特にそう感じます。実際、デザインの現場ではスタッフたちの目に晒されて自信を取り戻すこともあれば、その逆もあるし、そういうフィルターを通過して出来上がっているんです。モデルも世代の違う3人を起用し、オジサン枠のヨッピーと若者枠のソウシとキッズ枠ではヨッピーの息子の之雲という構成。バランスの取れたキャスティングだと思います。 H ヨッピーさんの場合、ヨッピーさん自身の歴史があって、その上に洋服を着せていく感覚。 N なかなか居ないよね、そういうキャラクターって。 H だから、いくらカッコいいモデルが良いと言っても、プロモデルじゃ物足りないし。ヨッピーさんみたいな人は本当に貴重な存在ですよね。 N 何ならモデルの性格までこだわり出しちゃうと、キリがないからね(笑) H そうなんですけど、モデルは性格も大事ですから。素直な性格だと仕事し易いし、逆に面倒臭い性格の子だとまた仕事したいと思いませんから(笑) N とにかく、服好きのいろんな人の協力を得て、様々なマテリアルが集まって完成したDESCENDANTの最新カタログです。
今季からはオンラインでも豊富なビジュアルを見てもらうことができるし、とても充実したコンテンツになったと思っています。

長谷川 昭雄(はせがわ あきお)
1975年生まれ。スタイリスト、ファッションディレクター。大学在学中、喜多尾祥之氏に師事しアシスタントに。ライター修行を経て、スタイリストとして独立。2007年『MONOCLE』(英国) の創刊に参加、2015~16年はファッションディレクターに就任。2012年には『POPEYE』(マガジンハウス) のリニューアルに携わり、2018年までファッションディレクターを務める。現在はウェブマガジン『フイナム』と協業するファッションメディア『AH.H』をディレクションする他、雑誌『UOMO』(集英社) にてファッションコラムを寄稿。ファッションブランドのコンサルティングやディレクションも手掛けている。