FEATURE 89

ケネディという名のボタンダウンシャツ。

FEATURE 89

ケネディという名のボタンダウンシャツ。

もう10年近くも前のことになりますが、DESCENDANTをはじめるときに100のスタンダードアイテムを考えてみたんです。ムードは’90年代で、アメリカのおじさんが着ているような普通の格好なのですが、DESCENDANTにとって必要な服とはなんだろうって。いろいろ出してみて、その中でもオックスフォード生地を使ったボタンダウンシャツ、タック入りのチノパンツ、デニムパンツのこの3つは外せないだろうということで、DESCENDANTのスタンダードにしたのが、今もこうして作りつづけているルーツとなります。

昔の自分は、ボタンダウンシャツといっても、アメリカントラディショナルのお手本のような着方はしていなくて、パンクな気分で、スプレーでペイントしたりしたものを合わせることで、そうとは見えないようなスタイルをしていたと思います。スタンダードなものではあるのですが、取り扱い方はちょっと変わっていましたね。

ただ、DESCENDANTで作っているのは、そういった横道にそれたようなものではなく、ベーシックなアメリカンクラシックのボタンダウンシャツです。実は、ちょっとしたイメージがあって、アメリカの元大統領のジョン・F・ケネディの家族が避暑地として使っていたケープコッドにあるハイアニス滞在中にケネディが着ていたような格好で、長袖のボタンダウンシャツをチノショーツにタックインして、足元はノーソックスでボートシューズ、連れている犬はゴールデンレトリバー。シャツは腕まくりしているような感じです。

シャツのパターンはシーズンによって異なるときもありますが、最近作っているのは比較的ゆったりとしたものとなっています。アームホールは広くとっていて、タックインして着てみると、袖ぐりがパンツのウエストに近い感じのところにくるのが特徴です。この大きめなシルエットは、体ができあがっていない子どもが大人用のシャツを着ると自然と出てくるようなもの。まだ、そのサイズ感に合っていない、似合っていない状態だから出せるスタイルで、きちんとしたフォルムで着られない少年のような着方ができるシャツがいいなと思って、サイズ感の大きいものにしています。’90年代っぽさというのは、そういう部分に出ているのかもしれません。

オックスフォードの生地感としては、洗ったときの洗いざらし感が気持ちのいいものを選ぶようにしています。コシがあって、脱脂感のあるもの。脱脂されたオックスって気持ちいいですよね。

僕自身の着方も変わってきていて、以前は、ボタンは上まで留めることが多かったけど、第2、第3ボタンと開けることに抵抗がなくなってきました。それは年のせいかもしれませんが、だんだん気にしなくなってくるので不思議です。ブラウジングしたり(シャツの裾をパンツにイン)、袖をめくったり、カフスのボタンだけを外したりと、自然といろいろやっています。一方で、先日訪れたLAでは、10代の男の子たちがボタンダウンシャツを自然と自分のクセで着ているような感覚で、前のボタンは開けたり閉めたり、意識もせずに、自分の思うままに着こなしていたのが印象的でした。そう思うと、ボタンダウンシャツって、意外といろいろな着方ができるアイテムですよね。

そういえば、LAで久しぶりに会った昔からの友人のVANSで働いているライアンは、いつでもボタンダウンシャツを着ているんです。いわゆるプレッピーのサイズ感で、サングラスにボタンダウンシャツ、デニムパンツに足元はVANSの「オーセンティック」。知り合った頃だけは違ったけど、ずっと会うたびにこういう格好をしているんです。

西山徹

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