FEATURE 79
ポロシャツの憂鬱。僕が初めてポロシャツを買って着たのは、’80 年代後半で中学生の頃でした。
ポパイの影響をものすごく受けて、当時原宿にあった『VOICE』でピンクだったか、ペパーミントだったかもう忘れてしまいましたが、友達と一緒に買いに行ったのを覚えています。
その頃は、ポロシャツがいろんなカルチャーを持ち始めた時代でもあったと思います。イギリスならルードボーイの格好があったし、アメリカならヒップホップの人らの着方があった。フランスにもジャマイカにもそれはあった。同じポロシャツだけど、それぞれ着ているブランドは違うし、サイズ感もバラバラ。品のいいプレッピースタイルから、パンク、ヒップホップ好き、不良の着こなしまでわかりやすく分かれていたのがポロシャツでした。着方もそれぞれに決まっていて、アイデンティティの象徴でもあったと思います。
イギリスのものはシャツを着るような感覚で着ることができ、フランスやアメリカのものはスポーツテイスト。袖がパフスリーブなのが特徴的で、その独特なシルエットにちょっと抵抗感が出てきたりしたことも若い頃はありましたね。ついでに言うと、ロゴが入っているのも少し敬遠するようになった時期もあったりしました。
話は逸れますが、ロゴといえば’90 年代頃には、アメリカの運送会社などのユニフォームやシリコンバレーのIT 系のコーポレートユニフォームとしてシャツに変わるようなクールビズアイテムとしてのポロシャツ再解釈は興味深かったものです。当時から気にはなっていましたが、時は流れ、今でこそ再解釈され、あの野暮ったさが逆にカッコイイものとなりました。
トラッドの王道を踏襲してきた人たちはポロシャツを上手に着こなしている印象です。本来のテニスなどのスポーツカルチャーを背負っている人たちも格好いいし、まったく嫌味じゃない。でも、僕らにとっては意外と野暮ったいアイテムだったりするのがポロシャツです。ミックスカルチャーに生きていると王道に着られない難しさというか、何かを見つけ出して、手繰り寄せて着ないと、なかなか着る理由が生まれない不思議なアイテムなんです。
なので、ディセンダントでは、キュッと絞られる袖のリブは付けなかったり、裾の高低差もなくしてストレートカットにして、襟型もワイドスプレッドで広くとって、さながらTシャツのような感覚で着られるように作っています。素材は鹿の子で、サイジングも、ゆったりしたシルエットも、トラッドなものよりもラフに合わせられるように。あと、よりTシャツに近い天竺素材のも作っています。
今日あらためてポロシャツの話をしたら、ちょっと着てみたくなりましたね(笑)。
談
西山徹