FEATURE 116

サマータイム・ラプソディ。

洋服って、ふつうに見えるものほどごまかしが効かないものですよね。でも、ふつうなものほど、その人のスタイルや生活感に合ったときに、格好よく見えたりする。働いている人もそうですけど、その環境の中で、溶け込んでいるような、けど、自分らしさが出ているような人は、なんだか人に魅力があるようにも思えます。

今回撮り下ろしてもらった上の写真なんて、まさにふつう。ポートタウンのボードウォークでも歩いてそうですが、なんてことないT シャツとジーンズに、ありふれた感じのダッドキャップなんかをかぶっているだけで、昔はこれを格好いいなんて思って見たことは一度もなかった。T シャツをパンツにタックインするのもそうだし、開襟シャツやタック入りのチノパンなんて、ふつうのおじさんのスタイルにしか見えていなかったんですけどね。いやむしろ、そのおじさんたちもそれが格好いいとは思っていなかったはず。だけど、現代においては情報も多く、年齢、性別関係なく、誰もがファッションにエントリーできる環境だからこそ、今あえて見過ごされていたふつうを考えるのがいいと思うんです。個性って、そんな禁断のエリアを知ってこそ、自分のものになっていくんじゃないのかなあ。

色って不思議ですよね。このペパーミントも見る季節によって印象がまるで違ってくるんです。この夏の服を冬に仕込んでいるときにはただの差し色ってくらいの感じのものでしたが、春から夏に移り変わる今のこの時季にあらためて見ると、驚くほど魅力的に映ってくる。服って、何を着るかで気分もガラッと変わりますから。若い頃は、服の違うところを見ていたから、その気分には気づいていなかったですけど、こういう色が着たくなるのは夏の特権ですね。

この上の写真はニューヨークのワシントンスクエアパークに見えてて(笑)。映画『KIDS』に出てくる公園で、余談なんですけど、90 年代の頃、僕が生まれて初めてニューヨークに行って泊まったのは、ワシントンスクエアパークの外周にあったホテルでした。なんだか、ちょっと思い出しちゃいましたね。

西山徹

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