FEATURE 83

スリッパはマヒマヒ柄。

ハワイローカルのSCOTT HAWAIIと最初にコラボレーションをしたのは2018年でした。2019年にも一緒に作ったので、少し時間が経ちましたが、今回で3回目のものづくりです。

僕がSCOTTを最初に認識したのは、ハワイに住んでいた叔父が、アメリカ土産として持って帰ってきてくれたものの中に入っていたビーチサンダルでした。たしか、ロサンゼルスオリピックがやっていたので1984年だったと思います。

そんなSCOTTとものづくりを始めたのは、ハワイに住んでいた従兄弟たちがスコット兄弟と付き合いがあったのがきっかけです。彼らのオフィスに遊びに行き、ハワイらしいのんびりしたアイランドバイブスたっぷりの仕事ぶりや、デッドストックのパーツの格好よさを目の当たりにしたときに、一緒にものづくりができたら楽しいだろうなと思ってしまったのです。スコット家は、ハワイでは“スリッパ”と呼ばれるサンダルを実に90年以上も作り続けていますからね。

僕自身も従兄弟がいたというのもあってハワイで休暇を過ごすことが多くなり、すっかりハワイの魅力に取り憑かれてしまったひとりですが、こういったアイランドバイブスは、いざ東京に持ち帰ると漂白されてしまい、あの気持ちよさは残念ながら届けづらい。作られた観光地ではあるけれど、ビーチホッピングも釣りも買い物も、ハワイに行かないとそのよさはわからないことが多いし、島に入っちゃうと靴下なんてはく時間もありませんから、こういったSCOTTのスリッパが必要となるのです。けれど、SCOTTがハワイのどこにでも置いてあるかというと、そうでもない。相当ちゃんと探さないとなかなか売っていないのもいいところなんです。ましてや、日本でもSCOTTってほとんど見かけませんよね。

話が長くなりましたが、どうして今回、スリッパのウェビングテープがマヒマヒ柄かというと、最初にコラボレーションをした5年前に、「マヒマヒフィッシュクラブ」という同好会的コンセプトを掲げていたのを思い返して、マヒマヒをテキスタイルにすることにしました。日本名はシイラ。ハワイではマヒマヒという名前の身近な高級魚です。食事でもマヒマヒはよく出てきます。虹の魚とも言われていて、海からあがると黄色や青、緑と色が変わります。ちなみに、「マヒマヒフィッシュクラブ」ですが、普通はフィッシングクラブだと思うのですが、僕たちは“魚が好き”だということでフィッシュクラブと命名していたのです(笑)。

こういった自然のものを柄にするのは、ハワイなどではあるのかもしれませんが、東京だとそういう意識は少ないですし、自然も近くにないから思いつきづらい。魚の柄もアースカラーとも言えますし、海の中では海上から見えづらくさせるための迷彩柄とも言えます。こういう有機的なものをテキスタイルにするのは楽しい試みです。

2018年に最初に作ったのは、デッドストックのウェビングテープに、ハワイらしくフットベットが溶岩(Lava)の形状のもの。もしかしたら、フットベッドが溶岩を模したものとは気づかないで履かれている方も多いかもしれません。
使用されたフットベッドは、パホイホイ溶岩に似せたカスタムデザインで、より滑らかでクッション性があります。

2019年の2回目のコラボレーションでは、ハワイではフォーマルな形のものを作りました。
ハワイのほかのビーチサンダルと比べても、重量感があって、アーチが高くキレイで、クオリティが高くなっています。

今年のものは、オリジナルのマヒマヒ柄のテープに、アウトソールはアイボリーにしました。魚のお腹みたいなイメージでしょうか(笑)。

ビーチサンダルはもちろん、首まで日除けが付いたシェードハットや、白のロングスリーブもそうですが、これらはファッションではなく、海の近くで生活している人たちの道具のようなものなのだと思っています。その環境下では、そうならざるを得ないというワークウェアのようなもので、日差しを避けるためにロングスリーブを着るのです。夏の日差しは半袖よりも長袖のほうが場合によっては涼しいし、ただのコットンのロングスリーブで、首もヨレヨレだけど、自分にとってはそれが無性に格好いい。ソルトライフを送る人たちの日常着、海辺の普通の生活って感じが好きなんです。白いロングスリーブに、ショーツに、日除け付きの帽子に、ビーチサンダル。これが海辺の正装です。ここがオリジナルだというのを忘れたくなくて、DESCENDANTでは夏になると白いロングスリーブを作ります。今年はSCOTTと“スリッパ”も作ることができてよかったなって思います。


西山徹

*MAHI MAHI SANDAL. SCOTT. HAWAII は、7月上旬よりDESCENDANT取り扱いの各店舗にて販売予定です。

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