FEATURE 108

夏色の正装。

FEATURE 108

夏色の正装。

老舗のアウトドアブランドなどで昔よく見かけた色褪せた服ってありますよね。
だいたい、そういった服を着たおじさんたちを見ることが多いのはアメリカです。
僕が服に興味を持ち始めるより以前からあるアメリカントラッドの象徴のようなもので、現地では当たり前のように風景に馴染んだダッドスタイルです。その自然体な姿に僕はずっと惹かれているのだと思います。
そんな風合いのでたポロシャツは遊びある正装で、Tシャツは遊ぶ気満々、というイメージです。

いつも言っていることですが、僕は市井のなんでもない人の格好につい目がいってしまいます。
そういう人たちが春夏にそれとは意識しないで着ている、着古し、日焼けで色が抜けてしまったような雰囲気のものが好きで、そこをインスピレーションに、長いことピグメントダイ(紫外線をたくさん浴びて色褪せたような、色落ちしたような染色加工)のアイテムを作っています。

たとえば、黒は黒でも、ベタッとした黒は夏には少し暑苦しいものですよね。
ピグメントの白っぽい薄墨の黒は、見た目にも和らぐ情緒的な色合いで、黒といえどもサマータイムのカラーパレットのひとつです。

外遊びを思い切り楽しんでいる玄人たちが着ている服は、日焼けでそうなってしまうのか、はたまたピグメントダイのものなのかはあれですが、どちらにしろ浅い色を着るのがマナーです。その季節がやってくれば、僕は時と場合によって、濃色、原色、淡色、白色と使い分けて着ています。ただ、ベタ黒を夏の海に着ていくのだけはしませんが(笑)。

西山徹

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