FEATURE 153

あの頃のアメリカのワークウェアを
追いかけて。
POST O'ALLS × DESCENDANT
2025 AUTUMN COLLECTION
POST O'ALLSの大淵毅さんにヒッコリーのシャツジャケット、デニムパンツ、エンジニアキャップを作ってもらいました。POST O'ALLSはもちろん昔から知っていて、大淵さんとは30年前にもお会いしたことがあったんです。

TET
大淵さんと初めてお会いしたのは90年代のニューヨークでした。NIGOくんがPOST O'ALLSとのコラボレーションで打ち合わせするというので帯同していたんです。くっついて行っていただけなので、大淵さんの印象には残っていらっしゃらないとは思いますけど(笑)。
OHFUCHI
あのときはVINTAGE KING(*1)のチームもご一緒でしたよね。(*1原宿のプロペラ通りにあった古着店)
TET
そうですね、VINTAGE KINGの合宿所みたいな部屋にもお邪魔した記憶があります。
OHFUCHI
SUNRISE MARTという日本食のスーパーがあって、その斜向かいくらいにあった。すごくいい場所でしたね。
TET
大淵さんはいつからニューヨークに住んでいらしたんですか?

OHFUCHI
87年くらいからです。POST O'ALLS は93年から始めました。
TET
ニューヨークでのその打ち合わせも、まさにヒッコリー(*2)でライニングのついたシャツジャケットがセレクトされていて。(*2)ストライプ柄に織られたデニム。
OHFUCHI
懐かしいですよね。
TET
DESCENDANTでもこういったライニングが付いたバッファロープレイドのシャツを作っているんですけど、今回はヒッコリーがいいねとなって、そういえばヒッコリーって大淵さんとNIGOくんが作っていたのを思い出して、こういうコンテクストがあるとなんだか面白いですし、やっぱりこの独特なPOST O'ALLSのパターン(*3)が好きなので、ぜひお願いしたいなと声をかけさせていただきました。(*3)服を作るための設計図。型紙。

OHFUCHI
のちのちわかったんですけど、洋服のパターン、型紙の作り方というのは、日本だとある程度決まったメソッドがあるんですよね。僕はアメリカで型紙を習いましたし、アメリカの服の型紙が好きでしたので、自由というか、これまで着てきた日本のものとは違うなとは思っていました。特に古着によく現れていて、その着心地も気になっていたんですよね。
TET
勉強されたときは、アメリカの学校で、アメリカの先生に教わったんですか?たしか、Schottでパタンナーをやられていた方でしたよね。
OHFUCHI
Schottで型紙を作っていた方で、服飾の先生もやっていて、最後にリタイヤしている頃にうちの仕事もお願いしたりしていたんです。多くの人が着ているSchottのモーターサイクルジャケットやPコートとか、あのへんのパターンを全部引いたんだなって思うとすごいですよね。でも、POST O'ALLSが頼んでいたのは全部というわけではないんです。その方はその方でクセがあって、僕は僕で自分の変なクセがあったりするので、型紙はいろんな方にやっていただきました。パターンはアメリカの学校でも習っていたというのもあるのですが、気がついたら自分でも引くようになっていましたね。
TET
今もパターンはやられているんですか?
OHFUCHI
今はもう紙じゃなくてデジタルなので、これまでにあるものを新しく作り直している感じですね。

TET
僕がアメリカを気になり始めたのは80年代で、当時のアメリカの現行ものを着るようになったんですけど、当時の自分みたいに若くて体が華奢だと、背中にのるような着方ができない。アメリカの人は体がデカくて、背中に筋肉もある人たちだから、だいたいのワークウェアも背中にのる感じで着るんですよね。本当はそういう背中が抜ける感じがよかった。大淵さんのアトリエに来て、たくさん着させていただくことで、いろんなことを思い出しました。今もそういったアメリカのパターンを基本にモディファイされてやられているんだろうなと思ったんです。あの頃の服の感じ、アメリカのワークウェアの感じを出すには、大淵さんを頼らざるを得ないなと。30年くらいやってきて、ようやくこういう作り方が正統だなって思うようになってきました。
OHFUCHI
こだわるポイントはいろいろありますよね。表地はネルシャツとかで裏がキルティング。そういう格好しているワーカーの人が当時は多かった。デニムもキャンバスも全部リジットで糊付けのギチギチのものでね。うちがお願いしていたニュージャージーの工場の若い子たちは、生のリーバイス505を腰ばきしていましたよ。洗っていないものをあえて。ニュージャージーでは流行っているのかなって(笑)。場所によってだと思いましたけど。
TET
それって90年代ですか?
OHFUCHI
そうですね、90年代のはじめの頃だったかと。
TET
90年代初頭にアメリカ人がリジットの505をはいていたんですね。格好いいですね。

OHFUCHI
工場のそばに、アーミーネイビーショップ、いわゆるサープラス屋があって、米軍の放出品とか、あとは作業着を売っているんですけど、そういうところに行くと裏地がキルティングでハンドウォーマーポケットがついた今回のシャツジャケットのようなものがたくさんあった。この感じが自分は90年代っぽいなって。いろんなブランドから出ていましたよね。
TET
大淵さんに作ってもらったこのジャケットも、襟の付け方が独特なんですよね。台襟を作ると襟が高くなってフォーマルに見えがちなんですけど、すごく低めにセットされているから、カタくならずに、ちゃんとカジュアルに見える。
OHFUCHI
そういうことを言ってくれる方が少ないので嬉しいですね。ベースはPOST O'ALLSのシャツの型があって、そこからいじっていってこの形になっています。当時、自分のブランドの服も着ていましたが、こういうジャケットもよく着ていましたしね。

TET
今回のパンツは最近のPOST O'ALLSの定番的なパンツを選ばせてもらいました。DESCENDANTでいうところのビーチパンツみたいなものです。POST O'ALLSのスタンダードとDESCENDANTのスタンダードがあわさったようなパンツなのかなって。
OHFUCHI
ステッチの配色はインラインとは変えましたよね。
TET
大淵さんは最近はこればっかりはかれているとお聞きしましたけど。
OHFUCHI
気がついたらベルトしなくなっちゃって(笑)。それじゃいけないとは思っているのですが。ニューヨークから日本に帰ってきたのが2018年なんですけど、その数年前からスウェットパンツばかりはくようになっていて。もともとはポリエステルのジャージを作りたかったのですが、アメリカだとあまりいい生地がなくて、日本に帰って作ったりしていたんですけど、気づけば、こういった布帛のパンツもウエストがゴムになってしまって。
TET
でも、シンチバックがついていたり、昔ながらのディテールがサラッと入っていますよね。
OHFUCHI
このシャツジャケットともよく合うんじゃないかなって思いました。

TET
エンジニアキャップはDESCENDANTの形で、このシャツジャケットとデニムパンツと共地で作っていただきました。
OHFUCHI
生地はこのために全部新しく作らせてもらいましたね。
TET
古いものって今も見続けていますか?
OHFUCHI
古いものは相変わらず好きですし、ずっと好きなことをやってきているんですけど、多少距離を置きながら、そういう古いものへの探求も若い人に任せようかなって思うようになってきましたね。
TET
その感覚、なんかちょっとわかりますね(笑)。
西山徹

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