FEATURE 155

Sittin’ On The Dock

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Sittin’ On The Dock

思ったよりも寒い日が続きますね。

もうPコートのような縮絨のウールメルトンのものを着てもいい日があるくらいです。

Pコートって、これまで何十年とつくってきたアウターウェアで大好きなコートのひとつです。もともとはネイビー由来で船の甲板で着られていたものですが、ワークウェアのような感覚ももっていて、寒い船上ではデッキクルーもだいたいラペルを閉じて、一番上のボタンまで閉めている。そういうものを昔から見てきたから、僕自身もそう着ていることが多いです。細かい部分ですが、好きで見てきて、記憶に残っているものってディテールに現れるものですよね。でも、それは僕の着方であって、自分が思うように着たらいいのだと思います。

袖の共地のワッペンは手縫いで不揃いにまつり、ポケット口にはDESCENDANTとチェーンステッチで刺繍が入ります。アノニマスなものをDIYで個人のものとするような感覚です。既製品なんだけど、少しアトリエメイドな気分をのせて。あと、Pコートで思い出すのは、99年の映画で「The Boondock Saints」。アメリカのアイリッシュ系兄弟の話で、Pコートといえばのバイブル的なものですね。あのノーマン・リーダスもほぼ新人のような雰囲気です。

ちょうどこの時期はショートブルゾンのようなものが多いですね。Pコートもそうですけど、その昔、アメリカのカウボーイが牧場で着ていたランチジャケットの現代版ともいえるフリースと機能素材のリバーシブルジャケットや、アメリカの作業員がインナーに着るようなベストがベースになったフリースライナージャケットなど、こういったものも総じてワークウェアと言えるのかもしれません。合わせるパンツのワタリは太めです。

一見するとトラッドなアイテムに見えるのがDESCENDANTの服ですが、ちょっとしたディテールにこれまで自分たちが通ってきた道、自分なりに体感してきたものが、気づかないくらいに入っています。ストリートアイデンティティといえるようなものが残っているのを楽しんでもらえたらって思っています。

西山徹

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